
監修:
私たち訳あり物件管理センターは35年以上にわたり、いわゆる訳あり物件に特化した不動産取引を行ってまいりました。特に立退きトラブルや事故物件を代表とする空室問題は非常に深刻で、自社所有物件も含めて幾度となく対応してまいりました。経験を積み重ね、蓄積してきたノウハウをもとにオーナー様に役立つ情報を発信し続けます。
「家賃さえ払っていれば、何をしてもいいのか」
所有する大切な物件で、ルールを守らない、近隣に迷惑をかける、あるいは何度注意しても改善の兆しがない「厄介な借主」に頭を抱えているオーナー様は少なくありません。精神的なストレスはもちろん、建物の資産価値低下や、他の優良なテナントの退去リスクにまで発展しかねない切実な問題です。
しかし、日本の法律(借地借家法)では借主の権利が極めて強力に保護されています。店舗や事務所の場合、住居以上に立ち退きのハードルは高く、感情的に「出て行ってくれ」と訴えるだけでは、かえって泥沼の紛争を招く恐れがあります。
厄介な借主をスムーズに退去させ、平穏な賃貸経営を取り戻すために必要なのは、怒りの言葉ではなく、「法的に有効な手順」と「揺るぎない証拠」です。
本記事では、立ち退き要求が認められる「正当事由」の考え方から、現実的に交渉を前進させるための具体的ステップ、そして万が一の際に備えた証拠集めの鉄則までを詳しく解説します。
一人で抱え込み、消耗し切ってしまう前に。まずは「法的な土俵」で戦うための武器を整理していきましょう。
- 立ち退きにおいて、借主は法律で強く守られています。退去を実現するためには正当な理由と経過の積み重ねが重要です。
- 立ち退きには管理会社の協力が必須です。テナントに飲食店などが入っている場合、積極的に協力してくれない業者も存在ますので注意しましょう。
- 一般の住居に比べ、物が多い、立地の問題など、立ち退きの難易度ががります。

すべて表示厄介な借主にお困りのオーナー様へ
厄介なテナントが入居していると、賃料は入ってきても神経が削られていきます。しかし、店舗や事務所の賃貸は住居と同様に借主の権利が強力に守られているため簡単に「出て行け」とも言えず、言い争いが長期化しがちです。
大切なのは、感情ではなく手順と材料(証拠)で動くこと。この記事では立ち退きの法的な考え方と、現実的に前へ進める方法を順に整理します。
借主は基本的に法律で守られている
借地借家法第28条では、貸主が更新拒絶や解約申入れをして明渡しを求めるには「正当事由」が必要とされることが定められており、貸主の都合だけで簡単に退去させることはできません。
つまり、ただ“困っている”“出ていってほしい”だけでは足りず、客観的に納得できる理由と経過を積み上げることが前提になります。
立ち退き要求が認められるには
立ち退きが認められるかどうかは貸主・借主双方の事情を総合評価し、借主の違反行為や滞納など“信頼関係破壊”を示せるかが焦点になります。どちらにせよ、早い段階から書面化と記録が勝負を分けます。
正当な事由にあたる場合
裁判実務では、主に以下のような事柄が考慮されて立ち退き要求が認められるかどうかが判断されます。
- 貸主側の必要性(建替え・自用など)
- 借主側の必要性(営業継続の重要性、代替物件の有無、移転コスト)
- これまでの経緯(契約期間、更新回数、違反行為の有無)
- 立退料
同じ理由でも“事情の積み上げ”と“条件調整”で結論が変わり得るのがテナント立ち退きの難しいところです。
オーナー様は、何のために明渡しが必要なのかを具体化し、いつまでに・どの程度の工事や利用を想定しているのかまで示すと説得力が増します。
正当な事由にあたる主な項目
たとえば再開発計画や建替え計画が具体化している、周辺の経済活動の変化により用途転換が合理的である、建物の老朽化で安全性や維持管理に問題があるといった事情が挙げられます。
重要なのは「いつかやりたい」ではなく、計画の具体性(行政手続、設計・見積、スケジュール)と、借主に与える影響をどう緩和するか(立退料、代替案提示)をセットで示すことです。この整理ができると、交渉も裁判も“論点がぶれない”状態になります。
・土地の再開発
土地の再開発は、その物件単独だけで完結する事柄ではなく行政計画や周辺一帯の整備と結びつくことが多いため、貸主側の必要性を説明しやすい事由です。再開発の範囲、着工予定、関係者の合意状況など、客観資料が揃うほど正当事由は厚くなります。
一方、借主にとっては移転が死活問題になり得るため、移転先探しの協力や立退料の提示など、現実的な着地点を用意することが重要です。
・経済活動の活発化
経済活動の活発化とは、周辺の人流・需要の変化により、建物の用途やテナント構成を見直す必要が高まる状況を指します。たとえば業態転換や大型改装で収益性・安全性を確保したい場合、貸主側の合理性として主張されることがあります。
ただし、「儲けたい」だけでは弱いため、競合状況、改装の必要性、工事内容と期間、代替区画の提案など、事業上の必然性を具体的に示すことが肝心です。
・建物の老朽化
建物の老朽化は、耐震性・設備故障・漏水など安全面の問題と結びつくと正当事由が強くなりやすいです。点検報告書、修繕見積、構造計算、行政からの指導履歴などがあると説得力が上がります。
老朽化を理由にする場合は、修繕で足りるのか、建替えが不可避なのかを説明できるようにしておくことが大切です。借主側の損失も大きいので、移転準備期間や立退料の調整もセットで進めます。
正当な事由なしに認められる場合
一方、上記のような事由がなくても立ち退き要求が認められる場合もあります。犯罪行為などで賃貸借の信頼関係が根本から壊れた場合、契約の前提を逸脱する使用(店舗契約なのに居住する等)、賃料の長期滞納などが典型例です。また、定期借家契約のように期間満了で終了する契約、短期の一時使用目的の賃貸借など、制度上“終わり方”が明確なタイプもあります。
ただし、いずれも手続きを誤ると紛争化するため、通知の時期・方法・証拠の揃え方が重要です。感情ではなく、法的根拠と契約条項で淡々と進めましょう。
物件での犯罪行為
たとえば物件内で犯罪が発生したケース、借主が有罪判決を受けたケースなどが挙げられます。犯罪が発生した場合、まずは警察への相談・通報を優先し、管理会社や弁護士と連携して事実確認を進めます。
注意点は、オーナーの推測だけで断定しないこと。捜査記録や被害届、近隣からの申告、監視カメラの映像など客観資料を押さえたうえで、契約解除と明渡し請求を検討します。速やかな初動が被害拡大を防ぎます。
店舗として借りている状態での居住
使用目的を事業用として契約を締結しているのにも関わらず、借主が物件を住処として使用している場合も、目的外利用として立ち退き要求が認められる可能性があります。まず契約書の用途条項(店舗・事務所限定など)を確認し、居住の事実を客観的に把握しましょう。
把握する方法としては郵便物の内容、深夜の在室状況、近隣の申告、写真などが挙げられます。状況を把握したうえで是正を求め、改善がない場合は契約違反として解除・明渡しへ進む流れを作ります。口頭だけでなく書面で段階的に通知しましょう。
3ヶ月以上の賃料未払い
賃料の長期未払い(おおむね3ヶ月以上)が発生した場合、貸主と借主との信頼関係が毀損されているとみなされます。とはいえ、自動的に退去させることはできず、督促の履歴を整え、期限を切った催告→内容証明→解除通知という順で進めます。保証会社が付いている場合は代位弁済の有無も確認し、同時に建物明渡請求の準備を進めると無駄がありません。
特に賃料滞納は長引くほど損失は膨らむので、感情的に責めるのではなく、段取りを組んで手続きをスムーズに進めることが重要です。入金があれば都度記録します。
定期借家契約
契約期間満了で賃貸契約を確実に終わらせるには、契約締結時の書面交付など要件を満たしていること、そして満了の通知を適切な時期に行うことが重要です。借主が「更新できるはず」「何も手続きをしなくてもこのまま入居できるはず」と誤解していると揉めやすいため、契約書・説明書面を再確認し、満了日と明渡し日を明確に提示します。
なお、満了後に漫然と使用を認め続けると争点が増えるため、管理会社・弁護士と段取りを組んで淡々と進めましょう。
一時使用目的の賃貸借
一時使用目的で契約したのにも関わらず退去しない場合も、立ち退き要求が認められる可能性があります。性質上、借地借家法の強い保護が及びにくい場面もありますが、形式だけ整えても実態が長期営業なら争われます。したがって、契約の目的・期間・終了時の扱いを明確にし、短期性を裏付ける資料(工事期間、出店期間、仮移転計画など)を残すことが重要です。
終了が近づいたら早めに書面で確認し、明渡しの段取り(原状回復、造作撤去、鍵返還)まで具体的に合意しておくとトラブルを減らせます。
退去させる一般的な手順
いきなり「出ていってください!」と強い言葉で迫るより、むしろ以下のような手順を踏んで理由と期限を示し、借主の事情を聞き、必要に応じて立退料で着地させる方がはるかにスムーズに進む可能性が高いです。適正な手順を踏めば、後に裁判になっても説明が通りやすくなります。
- ①立退きの説明文書を書面で賃借人に提示する
- ②立退きの説明を口頭で行う
- ③賃借人側の事情を聞く
- ④立退料の交渉を行う
①立退きの説明文書を書面で賃借人に提示する
必ず説明は書面を交えて行いましょう。口頭だけだと「言った・言わない」になり、感情的な衝突も起きやすいです。書面には、明渡しを求める背景(建替え、用途転換、老朽化、契約終了など)、希望する退去時期、今後の協議の進め方、連絡窓口を明確に記載します。
ここで大切なのは、断定的に脅すのではなく、協議の提案として丁寧に示すこと。後に裁判になっても、合理的に進めた経緯として評価されやすくなります。
②立退きの説明を口頭で行う
とはいえ、文章を送りつけるだけではオーナーの温度感や緊迫感が伝わらず、借主が誤解したり反発したりすることがあります。面談はできれば管理会社同席で行い、議事メモを残します。
説明では、なぜ明渡しが必要なのか、スケジュールはどうか、借主に生じる不利益をどう補うか(移転期間、立退料の考え方)を整理して伝えます。相手が怒っても言い返さず、論点を「退去時期」「条件」「手続」に戻すことがコツです。感情戦にしないほど、交渉は前に進みます。
③賃借人側の事情を聞く
テナントの場合は借主の事業の継続がかかっており、移転先の確保、内装工事、従業員の通勤、在庫の搬出入など、住居よりも条件が複雑です。借主側の事情を無視して一方的に迫ると、相手は「絶対に出ない」と固まりやすくなります。
希望する退去可能時期、移転費用の見込み、代替物件の条件、造作の扱い(買取・撤去)、原状回復の範囲などを丁寧にヒアリングし、メモに残しましょう。ここで聞いた内容は交渉材料になるだけでなく、後の立退料算定や和解条件の設計にも直結します。
④立退料の交渉を行う
テナントの立ち退きは、法理だけでなく現実の損失補填がないと進まないケースも多いです。立退料には、移転費用、造作の撤去・再設置、休業損失、広告・周知費用、保証金の精算などが絡みます。
貸主は「いくらなら早期に出られるのか」を把握し、支払時期は原則として明渡し・鍵返還・原状回復の完了後に設定するなどリスク管理を万全にしておきましょう。金額だけでなく、退去日、造作の扱い、相互に追加請求しない旨を合意書に落とし込むと、後戻りが起きにくくなります。
借主は守られすぎ?!困っているオーナー様の本音
指示通りにテナントを使ってくれない、穴を開けている、共有部を占拠する、喫煙所にするなど、借主が起こしているトラブルの事例はさまざまです。それでも法律上は借主が強く、思うように進まないのが実情です。だからこそ次の考え方が重要になります。
家賃さえ払っていれば借主が強い
テナント側が「家賃は払っている」と主張する限り、裁判を起こしても膠着状態で何も進まない……というのはよくある話です。それ故に裁判を有利に進めるためには、家賃以外の“問題行為”を具体化し、繰り返し注意してきた経緯を証拠化することが欠かせません。
写真、録音、メール、注意文の控え、近隣テナントの申告などを時系列で揃えるだけで、交渉の重みが変わります。感情的に責めるより、事実で包囲網を作るイメージです。準備が整うほど、相手も現実的な退去条件に寄りやすくなります。
立ち退き料を高く払えば済む場合も
長期的な裁判になることが懸念される、あるいは既にそうなっている場合、多めに立ち退き料を払う旨を伝えればスムーズに退去してくれる場合が多くあります。ただ、これには当然資金が必要で、安易に高額提示すると足元を見られるリスクもあります。
それでも、空室損・修繕の遅れ・精神的負担・弁護士費用など“総コスト”で比較すると、早期決着の方が得になる場面は少なくありません。また、金額だけでなく、支払条件を明渡し完了後にする、合意書で清算条項を入れるなど、支払いの安全性を確保することが重要です。
本当に困っているオーナーが対応するべき流れ
相手のペースで対応を続けるほど消耗し、証拠も散らばります。やるべきは、証拠を固め、専門家に早期相談し、管理体制を整えて、同じ土俵で戦わないこと。次の3ステップで、現実的に前へ進めましょう。
STEP1:証拠を集める
↓
STEP2:すぐ弁護士に相談する
↓
STEP3:管理会社に相談する
証拠を集める
退去交渉や裁判で効くのは「困っている」という感想ではなく、具体的な事実です。無断造作なら写真・動画と工事日時、共有部の占拠なら掲示物や使用状況の記録、喫煙や悪臭なら日時・場所・第三者の申告などを記録し、注意しても改善しないなら注意文の送付履歴と再発記録を残します。
やり取りはメールや書面で行い、口頭しかない場合は面談メモを作り、可能なら録音も検討します。これらを時系列で一枚の表にまとめるだけでも、交渉の説得力が跳ね上がります。
証拠は“未来の自分を助ける保険”だと思ってください。集め始めるのが早いほど有利です。
すぐ弁護士に相談する
テナントの明渡しでは、通知文の書き方、解除のタイミング、立退料の相場感、訴訟の見通しなど、法的判断が連続して求められます。自己流で進めると、言ってはいけない発言をして相手に付け入る隙を与えたり、必要な手順を飛ばして不利になったりがちです。
弁護士が入ると窓口が一本化され、相手からの過剰連絡も減り、精神的負担が一気に軽くなります。相談時は、契約書、賃料の入金状況、問題行為の記録、これまでの注意履歴を持参すると話が早いです。弁護士に相談すると当然報酬が必要になりますが、早期相談は“損失拡大を止める投資”と考えてください。
管理会社に相談する
現場の運用を整えられるのは管理会社で、注意文の郵送、共用部のルール徹底、巡回記録、近隣テナントからの聞き取りなど、証拠化の“仕組み”を作れます。逆に管理が弱いと、借主は「押せば通る」と学習し、問題行為が常態化します。
現在の管理会社が動けない、対応が曖昧だと感じるなら、トラブル案件に強い先へ切り替えるのも選択肢です。訳あり物件管理センターは、管理困難な物件や厄介な借主対応の相談窓口として、状況整理から方針設計まで伴走できます。オーナー様が一人で抱えない体制を作ることが、最短の解決につながります。
訳あり物件管理センターは特殊な集団です!
訳あり物件管理センターでは、テナントの使い方が荒い、交渉が噛み合わない、退去まで見据えて動きたい……といった難易度の高い案件を、記録の整備から交渉の設計、専門家連携まで一気通貫で組み立てます。
オーナー様がやるべきことは、感情的に戦うことではなく、勝てる形に整えることです。もし今、「出て行ってほしいのに進まない」と感じているなら、状況の整理だけでも構いません。一人で抱え込まず、一度私たちにご相談ください。
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